日本胸部外科学会教育施設協議会会長 千原幸司
2014年の施設めぐり、総会・学術集会は新装なった社会医療法人近森病院心臓血管外科部長 入江博之先生が主催されました。
午前中は施設めぐりでした。とても深く心に残ったことは、自らが自分の持ち場、職責を担っている、職員の意識の高さとプライド、そして、随所に見られた患者さんへの心配りと働く場の工夫でした。救急外来を訪れました。患者さんを診察している研修医は背中にCHIKAMORI RESIDENTのロゴがある診察医を着て、凛々しく、「こんにちは、病院見学に来ました」と、つい軽い口調でやや土足風に入った私は研修を指導している医師から、患者さんのプライバシーを思ってさらっとたしなめられました。見学者に媚びないその姿勢がとてもさわやかで襟を正す思いでした。さすがに救急医療、DMATが活躍する病院です。救急外来のそれぞれの部屋に赤、黄、青(緑)の目印が設置してありました。日々、入口でトリアージを行う訓練を受けていることになります。ICUなどの急性期の病棟では毎朝、医師・看護師・リハビリテーションスタッフ・CEなど患者さんを実に大勢の職員がミーティングを行い、情報を大きな画面で共有し、チーム力を発揮できる仕組みが作られていました。
急性期の備えもさることながら、回復期も視野に入れた施設づくり職員の配置も目を見張るものでした。病棟へ訪れると、通常のリハビリテーションのプログラムのみならず、台所や風呂、トイレ、など「うちに帰ろう!」が訓練できる設備になっていました。
屋上にはヘリポートがあり、南は太平洋、異国へ、背に幾山々、超えて脱藩の道、国を思い、わが国を洗濯しに立ち上がった土佐の志士、いい眺めでした。案内していただいた方ももちろん、背にロゴでした。
午後の近森理事長の講演を拝聴しました。明確なビジョンとリーダーシップ、午前中に心に残ることがどこから来たかがわかりました。災害医療のキーワードはCSCA-TTTです。
普段の活動でも同じことです。指揮命令系統と現場の力、二つ合わさって初めていい組織となります。病院全体のCSCA・TTTがうまく機能し、それぞれの現場にフラクタルにCSCA・TTTが成立していることを目の当たりにできました。現場の入江先生の熱き想いは病院全体の力を示す高い能力のTTT担当部隊を作っており、先生自身のCSCAの高さも心に残りました。お世辞ではありません、私にとっては、「個のちから」が生み出す「組織のちから」を随所に感じる、とても刺激をうけた「施設めぐり」でした。
近森理事長、入江部長をはじめ、歓迎していただいたスタッフの皆様に深く感謝申し上げ、結びとします。